幻想郷ではたらくひとたち二次創作 その1〜魔術師社員の日記

 日本の魔術業界では(といってもありやなしやの狭い業界ではあるが)殆どその存在を知られていない幻想郷だが、欧米の魔術界ではティル・ナ・ノーグやファンタージェンと同じ位メジャーな異界〜架空の世界の一つとして知られている。
 欧米の魔術師達がしばしば幻想郷を訪れているという話をしたらチーフが驚いていた。
 無論幻想郷は、外界の人間にとっては非常に危険な場所だし、チーフはそれらしい人間の姿を見たら直ぐ解るはずなのにと首を傾げていたが、何も彼等が必ずしも取って喰われているわけではない。彼等は彼等なりにリスクの低い方法を知っている、というだけだ。
 方法は一言でいうと、アストラル体として侵入する。
 アストラル体ならチーフが見られなくても当然の事である。

 アストラル体として侵入するには、一般にアストラルトリップとかパスワーキングと呼ばれている方法を使う。
 パスワーキングは予めシナリオを用意しておき、シナリオに沿って瞑想を行い、幻想郷に侵入し、彼の地を巡る。入口にはタロットカードを使う事もある。

 ここでパスワーキングという手法が生きてくる。
 肉体を持たなければ低級の妖怪に喰われる事はまずないし、シナリオで予め出会う存在が決まっているので、危険な存在や、シナリオに沿わない存在は追儺を行う、という判断が容易に行える。なお、人妖、と言わなかったのには、人間との遭遇を想定していないのと、神々が含まれるからである。
 彼等にも彼等の都合がある、会えなかったらどうするのか? と聞かれたので、定点になる存在はパチュリー・ノーレッジ女史や八坂様の様な、普段から居場所がほぼ固定されている存在が使われると答えておいた。
 彼女らにそもそも会えない、つまり幻想郷が異変状態なら、アストラルトリップそのものが成立しないで幻想郷から弾き出される。
 魔術師であれば、幻想郷の異変を外界からも或る程度感知できるのだ。

 そんな理由で幻想郷のアストラルトリップ対象になる地域は紅魔館が一番の人気スポットである。
 異界の魔術師との交流はパチュリー女史にとっても興味深い物らしく、大体は歓迎して貰える。

 同じ魔術師でもアリス・マーガトロイドは、物理的に影響を与えない顕界の魔術を端から馬鹿にしているのか、殆ど相手にされないので魔法の森は不人気だとアメリカの某魔術結社員からのレポートがあった。

 その話を聞いたチーフが、だから彼女は月にロケットなんていう発想が思い付いたんだな、と独り合点していたので、そうかも知れないと答えておいた。

 -了-



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